位相空間論(1)

 「連続」などの数学の重要な概念を支配する位相空間(general topology)について、勉強したことを書いていこうと思います。

 私たちは普段、「空間」という言葉を聞くと、縦・横・高さを持つ3次元空間を思い出します。しかし、数学の中では、単純にある事柄を扱うための道具を揃えた集合という感じの意味で使うことが多いです。たとえば、「ベクトル空間」ならベクトルを扱うための道具の集合みたいに。位相空間(topological space)とは位相幾何学を扱うための道具を備えた集合です。

 それでは、位相幾何学とはどういうものでしょうか?まず、私たちがよく知っている「合同」について考えてみましょう。

<定義 合同>
ある図形Aを適当に移動して別の図形Bにぴったり重なるとき、図形Aと図形Bは「合同」であるという。


 感覚的にはこれで大正解なのですが、数学は定義や公理をもとに論理的思考によって定理を導いていく学問なので、これでは「適当に移動」とか「ぴったり」とかいうのが曖昧です。そこで、「合同」を厳密に定義してみることを考えてみましょう。まず、合同変換というものを定義しましょう。

<定義 合同変換>
平行移動、回転、鏡映とそれら、いくつかを合成してできるRn→Rn写像を「合同変換」という。


<補足:平面の場合の合同変換>----------------------------------
1.平行移動
 平行移動はその大きさと向きを表すベクトルによって定まる写像
2.回転
 回転は回転の中心と回転角によって定まる写像
3.鏡映
 鏡映は対称軸によって定まる写像

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 これで、「合同」の厳密な定義の準備ができました。

<定義 合同>
図形A,Bについて、

となるような合同変換が存在するとき図形A,Bは「合同」であるという。

 「長さ」や「角度」、「面積」などといったものは合同変換によって不変の性質です。これらを研究する学問というのがEucrid幾何学と呼ばれる、私たちのよく知っている幾何学です。

 次回は、これらよりも不変の性質が少なく、縛りの緩い「相似」について書こうと思っています。それでは、またお会いしましょう。


はじめよう位相空間/大田 春外

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